お互いの自由意志での「at-will 雇用」を考える

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転職が普遍化しており、企業と社員は腐れ縁ではなくなりつつある

転職者がさらなる転職予備軍を誘発する構図

 2020/01/09の日経新聞 朝刊に「同じ会社で定年を迎えたい就活生 56%」というパソナ総合研究所の 調査結果の引用があります。同調査の男子学生だけをみれば、すでに5割を割っています。平均ではなく流動性の高い職種では、さらにあと数割は低いだろう(≒転職肯定が過半)というのが私の肌感覚です。また、「初めての会社入社後に、転職するとしたら10年以内」という回答が9割にのぼります。辞めるなら30歳すぎまでが売りどきですので、職種によっては、10年目までにかなりの生え抜きがいなくなる事態が現実化していくのでしょう。

  昨年度 、私がいた部門でも離職が多く発生し、たった1年で1割強の社員が会社を去りました。いや、訂正します、彼らのほとんどが働き盛りであり、「今の会社を見限り、よりよい処遇へホップしました。見捨てられたのは我々です」というべきでしょう。もともとIT系エンジニアの多い部門でしたので、前々から転職は驚くほど活発です。転職した社員が残った同期とSNSで連絡をとり刺激するため、その学年はほとんど残っていない・・・とかもあります。人材難が高止まりしている職種ですし、転職エージェントも「転がしてナンボ」の商売なので遠慮呵責なしです。

 転職、フリーランス、副業解禁、経団連の通年採用宣言、同一労働同一賃金、初任給1000万円、AIで代替、SNS勧誘、紹介入社の報奨金、などなど新聞やTVをみなくとも、雇用情勢が急速にグローバル化、流動化していることは肌で実感します。まあ、ここ数年、多少の凸凹はあっても、このような趨勢には、私もすっかり慣れっこになりました。残っている社員をみると中途入社組が多くなっていますから、「入社年次管理」は過去の遺物です。このまま年に1割が辞めれば10年で全員がフルチェンジです。

企業と社員におけるat will 雇用という契約概念

 そんな中、目を掛けていた中堅I君も、昨秋にベンチャーに転職してしまいました。彼にとって、このベンチャーも踏み台でしかなく、3年以内に独り立ちするそうです。彼の場合、奥さんも働いているので、未練なく踏ん切りがついたとのこと。 私自身は企業人としてはよろしくないかもしれませんが、彼の独立志向は止められるものでもないため、密かに後押ししていました。

 私の勤める会社は、普通の純日本型なので、大卒の新人を一括で採り、新人が一人前になるまでの数年間は育成投資が先行します。しかし数年たち、経験を積み、手に職をつけたエンジニアに育つと、他社への転職やフリーランス化はリアルな選択肢となります。一方、会社の人事考課制度ではまだ差がつきませんし昇給も遅い。結局、早い場合は3~4年、遅い場合でもI君のように10年程度での転職となり、有効な防止策はないです。優秀であればあるほど抜かれるかも…と思っています。

 私自身は、留学したころから「社員と会社はギブアンドテイクの対等な関係」だと思っています。お互いに得るものがあるから寄り添っているだけ。どちらにとっても、より魅力ある境地がでてくれば、契約を解消し新たな構図を描くのが社会全体としては合理的です。一般に米国の雇用関係は、このような「お互いの意思 ( at-will employment) 」をベースにしているといわれてます。willとは意思という意味で、お互いの意思をもって契約が成り立っているという関係です。合意が意味をなさなくなれば契約を解消するだけです。

社員が一方的にat willメリットを行使しやすい時代

 日本では20年以上にわたり、停滞期が続きました。その間、企業は社員を定年まで雇用保障するかわりに、昇給や昇格テーブルを押さえ込む必要がありました。お互いがお互いをロックインし、身動きできない状態での折衷案だったと思います。会社に定年まで居続けることと引き換えに、社員も不遇を呑み込んできた時代だと思います。

 あれから長い時間がかかりましたが、今は人材難で転職先には事欠かない時代となりました。 一方、会社側は、派遣や契約社員などを織り込みながらも、正社員の終身雇用保障をまだまだ負っています。社員にとっては、ようやくat-will関係を活かせる時代ではないでしょうか。雇用保障というセーフティネットを確保しながら、転職や独立などのオプションを模索できるよい時代です。

 経団連VS学生大学のお互いが、今は、新卒採用時という入り口だけを議論しています。しかし、入社後から10年、20年と観察すれば、転職組が企業を支え「新卒生え抜き<中途」も珍しくなくなりつつあります。今の時代は「会社≒絶対的な存在≒定年まで庇護をうける存在」と思い込まず、たまたまその時の雇用契約相手と思うべきでしょう。固定観念に縛られず、価値観は多様で自分本位で考えるべきだと思います。私自身も過客に過ぎず、役定減給のため、リタイアする前から、すでに今の勤め先は過去の働きの回収時期、定年後の準備場所と割り切っています。

※上記内容は私個人の見解であり思索にすぎません  [Finchley 0022]

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